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古代信仰のルーツ

玉抱え石

​(たまがかえいし)

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比婆山山頂付近に点在する多数の丸い穴が空いた石群。「玉抱え石」と呼ばれるその石は古来より、魂の依代、子宝・安産の御神体として信仰されてきたと言い伝えられています。その正体は130万年前の溶岩湖が生んだ、地球の奇跡の石です。

​溶岩湖の中では、水分などの揮発性成分が上部に集まり過飽和状態になります。何かのきっかけで気泡が発生すると、自由空間の中で球体になります。その球体を周囲のまだ固まっていない溶岩が包み込み、冷えて固まりました。内部には高温の水蒸気があったため、鉱物が粘土鉱物へと変質していきました。
内部は粘土鉱物化していますが、ストロンチウム・ネオジムなどの成分は周囲の玄武岩と同じ。形は全然違いますが、生まれた場所は同じ溶岩湖の中なのです。

比婆山・玉抱え石・盃状穴
比婆山・玉抱え石・盃状穴

130万年前の溶岩湖の中で生まれた球体

テクスチャのある壁面

玉抱え石は岩の表面に、ほぼ完全な球体の穴がいくつも空いた石です。かつてその穴の中には溶岩湖が生んだ球体の石が収まっていましたが、長い年月の風化によって抜け落ち、丸い穴だけが残ったものが多く見られます。
縄文時代は1万年以上続いた、世界最古レベルの文明です。縄文のアニミズム信仰では、丸いくぼみ・球体は魂の依り代として特別視されていたと考えられています。山頂付近の岩に点在する不思議な丸い穴。そこにかつて球体の石が宿っていたとしたら、古代の人々はそこに何かを感じたのではないでしょうか。
世界中の古代遺跡に見られる「盃状穴(はいじょうけつ)」も、岩に刻まれた丸いくぼみです。地母神信仰の名残りだとも言われており、ヨーロッパ・中東・インド・アフリカ・アジアと地球規模で分布しています。比婆山の玉抱え石の穴と、世界の盃状穴。形の共通性は偶然でしょうか。
さらに世界最古レベルの縄文文化を持つ日本で、母神イザナミの埋葬地とされるこの山に、再生と子授かりを祈る丸い穴の信仰がある。いくつもの事実を総合すると、ここが地母神信仰・盃状穴のルーツと何らかの関係を持つ場所だったのではないか、という可能性が浮かび上がってきます。
もちろんこれは仮説です。しかしロマンがありますよね。

縄文人はこの穴に、何を見たのだろうか

参考文献・研究資料

1. 峠之内玄武岩の固結溶岩湖に関する研究

論文名
A solidified lava lake in an explosion crater within granitic basement, SW Japan

著者
Yoshihiro Sawada, Koji Uno, Tetsuya Sakai, Hironobu Hyodo

 

掲載誌
Bulletin of Volcanology
Vol. 85, Article 26

発表年
2023年

DOI
https://doi.org/10.1007/s00445-023-01634-3

研究概要

島根県安来市伯太町の峠之内玄武岩について、花崗岩基盤中に形成された爆裂火口を溶岩が満たし、そのまま固結した「固結溶岩湖」であることを地質学的に検討した研究です。溶岩湖は上部でおよそ340m×550mの規模を持ち、170m以上の深さに達すると推定されています。柱状節理の形態や方向、周辺岩石への熱的影響、古地磁気データなどから、溶岩湖の形成過程と冷却史が詳しく解析されています。

2. 伯太玄武岩の高ストロンチウム含有とマグマ成因に関する研究

論文名
Origin of Pleistocene Sr-rich Hakuta basalts, Shimane Prefecture, SW Japan

著者
Yoshihiro Sawada, Tetsuya Sakuyama, Tatsuki Tsujimori, Hirotsugu Nishido, Katsuyuki Yamashita, Syuhei Ohgo, Osamu Okano, Xiaoyu Zhang, Barry Roser

掲載誌
Lithos
Volumes 536–537, Article 108564

発表年
2026年

DOI
https://doi.org/10.1016/j.lithos.2026.108564

研究概要

安来市伯太町に分布する伯太玄武岩について、岩石学・鉱物化学・微量元素・Sr-Nd同位体・炭素同位体などを用いて、その特異なマグマの起源を研究した論文です。伯太玄武岩はストロンチウム(Sr)濃度が約1,700〜4,100 µg/gと非常に高いことが確認されており、一般的な火山フロント玄武岩とは異なる特徴を示します。研究では、沈み込むフィリピン海プレート由来の流体とマントルとの相互作用が、Srに富む玄武岩マグマの形成に深く関係している可能性が示されています。なお、本研究では伯太玄武岩を、峠之内玄武岩・比婆山玄武岩・上の台玄武岩などに区分して研究しています。

​雲伯堺
比婆山

大母神の坐所

本サイトでは、これらの学術研究によって確認された地質学的事実と、比婆山に伝わる古事記・信仰・地域伝承を区別しながら紹介しています。地質学的な年代、岩石の組成、柱状節理、古地磁気、ストロンチウム濃度などについては、上記の査読論文を主要な学術的根拠としています。一方、比婆山と伊邪那美命との関係や古代からの信仰については、『古事記』をはじめとする文献資料および地域に伝わる伝承に基づいて紹介しています。

​サイト運営者情報

比婆山観光案内所(上の台緑の村)〒692-0215 島根県安来市伯太町赤屋 上の台緑の村    お問合せ:0854-38-0022 

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